「とにかく、実際に見て確認してみてよ」
 彼女が言うには、店員は皆そのお客さんたちが気になっているのだが、当然だけどお客さんに対して店員が興味本位に質問して事情を聞くことはできないので、もやもやした気持ちを抱え続けて働いているとのことだった。
「分かりました。
 そうしたら、ひとまず一か月くらいはかかると思うんですけど、それでもいいですか」
 僕は枕崎さんに対してあえて確認する。
 ここで彼女に「そんなに時間がかかっては困る」と言ってもらえれば、全てが終わるのにと思いながら。

 現時点で枕崎さんたちが把握している、分かっている人物だけでも老若男女合計四人が存在するのであれば、その四人を把握するだけでも最低四回はこのカフェに来て、毎週同じ曜日の同じ時間帯に確認する必要があった。
「急いでいないから、じっくり取り組んでもらって大丈夫よ」
 期待外れの回答が返ってきた。
 やれやれ、予想したとおりやっぱり面倒なことになってしまったと思ったが、ここまできたらやるしかないと肚をくくるしか他に選択肢は残されていなかった。
 家に帰ったら、兄には一言文句を言ってやらなければ気が済まない。

 件の曜日と時間帯は、ちょうど明日の日曜日午後2時だということで、僕の向こう一か月の日曜日がこのカフェに拘束されることが決定した。
 さらには、明日からの暇つぶしを勉強道具にしなければ、直近のテスト勉強に支障が出てしまうことに気づいたのは、帰宅した後だった。
 今回の成功報酬、財力豊富な大学生の枕崎さんと兄の二人から絶対にもらってやるんだと、僕は固く決意した。