狭い人間かんけいだった。僕は自分のしょくばに勤める人と、数少ない友人とのあいだでしか社会を形成していなかった。不特定多数の人々に、恨みをかうようなこういもしてこなかったつもりだった。だけど、それは僕の勝手な思い込みだったのだろうか。
 時間経過の程度はどうあれ、このトラックがいつまでも同じ場所にちゅうしゃしていることを不審に思う人がそのうち現れるはずだ。そのときに僕が生きているかどうかはわからない。救急車を呼ばれ、警察を呼ばれ、この場所はそうぜんとするだろう。僕が荷台にいるのに扉を閉められているのは明白だから、けいさつの捜査によって犯人はいずれ明るみになるだろう。
 神だ川か、里菜か……。はたまた僕が予想していなかった人か。あるいはとおりまの仕業か。通りすがりの子供が、ちょっとした出来心でいたずらを図った可能性もある。いまの僕には結局誰か分からないけれど、捜査がじゅんちょうにすすむことを願うしかない。
 自分の命がきゅうちに陥ったときに、どうにか助かりそうだという見込みが少しでもあるときは、卑しくも生にすがろうとする。時間が経っても状況が変わらないとき、可能性のひとつひとつを無慈悲に奪われていくような感かくに襲われる。それと同時に、自分の体が少しずつ機能を失っていく恐怖にも、心は蝕まれていく。一瞬にしてい識を失うことも、命を落とすこともできないままにただ時かんが過ぎていっているだけの僕は、それをひしひしと味わっていた。諦めきれず、まだ生きたいと願っているからこその苦行であった。皮にくにも、一般的な統計と比べて体力があるというのも災いしているかもしれない。
 目をふたたび開く気りょくものこっていない。からだがうごかない。僕はもう、じぶんからそとにたすけをもとめることはできない。

きよsiごメnりなごmんこんnab……ぼk……ぅクを……。かまってくrrrrrrtえ……。
母……さ……n。sきニしんじゃtいうおやフコunあbおkで、ごmえんナサi
Iyあだ……死nいtあく……ni……。

 ぼくのじんせいってなんだったんだろう。これがうんめいなのだとしたら、ぼくのいのちがこんなところでおわるのだとしたら、そのうんめいをきめたひとはなんていじわるなんだろう。
うまれたときは、みんなひとしくうぶごえをあげながらじんせいのとびらをひらくというのに、おわりをむかえるときはふびょうどうだ。いままでいきてきたいみとは、なんだったんだろう。しょうらいのために、じぶんがしあわせになることをねがって、いままでどりょくしてきたのに。どりょく。むだだったんだ。むくわれないこともある。むくわれなさすぎるよ。いきがくるしい。なみだがながれっぱなしだ。なきたいのに、こえもでない。ぐずぐずしていないで、もっとはやくりなとはなしあうべきだった。りな、ごめん。かくしょうはないけれど、きみがもしぼくをこんなめにあわせたのなら、きみのそうぞういじょうに、ぼくはくるしんでいるよ。よかったな。
もうあせもでてこない。からだじゅうがいたい。きぶんがわるくて、はきけもするのにえづくきりょくもない。こかんがあたたかい。きっとおしっこもたれながしになっている。いやだなあ。ぼくがみつかったとき、きっとなさけないすがたでみんなにみられるんだろうな。
 でもどうしようもないよ。ぼくにはもう、どうすることもできない。
 はいたつ、だいじょうぶかな……。にもつがこないって、くじょうのでんわをかけてくるひとがそろそろあらわれるかもしれないな。ぼくのもとにかくにんのでんわがはいって、だれもでないからふしんにおもうだろう。そうすればぼくのいへんにきづいてくれて、はっけんもはやくなるかもしれない。だとしてももうたすかるみこみは……。
 いたい、いたい、いたい。くるしい、たすけて。いやだ、しにたくない……いや、もうこのくるしみからかいほうされるならいっそ……。らくにしてくれ……。

 きよ……。ごめんな……。こんなbおくをスきといっtえくレて、ありガtおおう。

 あたまのなかをながれるのは、ものごころがついてからこれまでのたのしかったできごとだった。これがそうまとうというやつだろうか。たしかに、しぬちょくぜんにまで、いやなことはおもいだしたくないもんな。よみがえってくるおもいでのおおくに、きよのそんざいがあった。あいつはいつもぼくのそばにいて、ぼくのじんせいをいろどってくれた。
 さがら……。こんなぼくになついてくれてありがとう。つらかったときに、どんなかたちであっても、ぼくをたよってくれてありがとう。できることならもっとなかよくなって、こうへいって、したのなまえでよべたらよかったな。こうへい……、おまえにはこれからもかがやかしいみらいがまっている。なまえのとおりだろ。こんかいのことでびっくりさせてしまうかもしれないけれど、ぼくのことなんてわすれて、おまえらしくげんきに、じんせいをまっとうしてくれよ。
 すいえいをもっとがんばって、べんきょうもがんばって、ちゃんとしんけんにしょうらいのためにがんばってたら、こんなことにはならなかったのかな。おそい。おそいよ。なんで、もうもどれないってわかってから、いろいろきづいてしまうんだろう。くやんでもくやんでも、かこにはもう、もどれないのに。おもいでをふりかえっても、あのころにはとどかない。

 くtいのなかガ、にがい。みず……。みずをkrえ。いtあい……。ごmえnなsあい…ごめnnあsあい……。ゆrうsいtえくだsあい……。

 めをひらいても、なにもみえなかった。ほんとうにひらけたのかどうかもわからない。ぜんしんがいたいのに、からだのかんかくがない。こんなになってからやっと、ぼくはきづいた。じぶんのきもちに。ひとをすきになること。すきだとおもえること。それはそのひとと、ずっとはなれたくないとおもうきもち。ずっとなかよしでいたいとおもうきもち。こころのそこからあいたくて、あえたらうれしいとおもえること。
 ぼくはきみといっしょにいたときが、いちばんしあわせだった。ぼくにとって、くうきのようなそんざいだったけど、だからこそひつようふかけつで、きみといっしょにいることがあたりまえになっていて、じぶんがいだいたかんじょうにきづいていなかった。くうきがなければ、ひとはこきゅうができないのとおなじ。じんせいにきみがいなかったらとおもうと、とたんにむねがくるしくなるんだ。

 こころのなかにひそめていたきもちをひろいあげる。もしもいま、ぼくがふつうのじょうたいで、すぐにきみにあいにいって、このきもちをつたえられたなら、きみはまた、わらってくれるかな。わらってくれると、しんじているよ。

あaaあ……、mおう、だmえだ……。
ねmうい……。やっtお、らkうにnあれる……。いやdあ。しにtあkう、nあい。
gおめんな、さyおなら……。


——いま、やっと気づいた。僕がほんとうに大切に思っていたのは、君だったよ、k……