ありえないと思うようなことが起こったとき、人はそれを奇跡と呼んだりする。昔流行った歌で、もう諦めかけていた相手が自分を選んでくれたのは、六月に雪が降ったり、太陽が月の周りを回ったりすることが起こってしまうくらいの奇跡だと歌ったものがある。素敵な例えだ。自分が大切に想う人と結ばれることは、果たしてどれほどの事象が重なって起こりうる出来事なのだろうか。
「最近、彼女とうまくやってるのか?」
助手席でコンビニのコーヒーを吸い上げながら、清志が聞いてきた。コーヒーはさっき買ったばかりなのにもう半分ほど減っている。対して僕のぶんはまだカップ一杯入ったままだ。
「うまくも何も、同じ職場だからね」
「毎日連絡してるんだろ?」
「うん、まあ」
車は、僕たちの住む市内の国道を軽やかに走っていく。右手には海が、左手には山がせまってきていて、景色は割と良い。
「でも、電話は嫌いなんだ」
「オマエ、喋り苦手だもんな」
「うん」
僕はあまり喋らない。そんなに僕のことを知らない人たちには、無口でクールなやつだと思われているらしいが、喋ることが苦手なのだ。どうやって会話を続けようとか、自分が出す話題に相手はちゃんとのってきてくれるだろうかなどと考えているうちに、二言、三言交わしていた会話は終わり、相手は愛想笑いを浮かべながら僕のもとから去っていく。
「かわいいヤツめ」
ズボボボと音をたてて、清志はコーヒーを飲みほした。余程喉が渇いていたんだろうか。それとも、僕があまり喋らないものだから、暇を持て余して飲み続けるしかなかったんだろうか。
「最近、彼女とうまくやってるのか?」
助手席でコンビニのコーヒーを吸い上げながら、清志が聞いてきた。コーヒーはさっき買ったばかりなのにもう半分ほど減っている。対して僕のぶんはまだカップ一杯入ったままだ。
「うまくも何も、同じ職場だからね」
「毎日連絡してるんだろ?」
「うん、まあ」
車は、僕たちの住む市内の国道を軽やかに走っていく。右手には海が、左手には山がせまってきていて、景色は割と良い。
「でも、電話は嫌いなんだ」
「オマエ、喋り苦手だもんな」
「うん」
僕はあまり喋らない。そんなに僕のことを知らない人たちには、無口でクールなやつだと思われているらしいが、喋ることが苦手なのだ。どうやって会話を続けようとか、自分が出す話題に相手はちゃんとのってきてくれるだろうかなどと考えているうちに、二言、三言交わしていた会話は終わり、相手は愛想笑いを浮かべながら僕のもとから去っていく。
「かわいいヤツめ」
ズボボボと音をたてて、清志はコーヒーを飲みほした。余程喉が渇いていたんだろうか。それとも、僕があまり喋らないものだから、暇を持て余して飲み続けるしかなかったんだろうか。