「いやー、よくわかんないけど、助かったのかな」
 久城さんのマンションを後にして、僕たちはトラックに乗り込んだ。思ったより大ごとにならずに済んで、内心ほっとしていた。
「パネェっす」
 相良はそれだけ言って、助手席のダッシュボードにコツンと額を当てた。安堵したのは、彼も同じだったようだ。すぐに顔をあげて、僕を見る。
「ホントにありがとうございました!アキトさんが対応してくれなかったら、おれ、やばかったっす」
 相良は、はあっと大きく息を吐いた。心の底から安心したような表情をしていた。
「それにしてもあの女、なんでアキトさんの顔を見た瞬間、コロッと態度が変わったんでしょうね」
「さあ……」
 僕は、トラックのエンジンをかけながら、間の抜けた返事をした。
「アキトさんは昔、やべえほどの不良で、あの女もそれに気づいて、怖気づいたとかっすか?」
「そんなわけないじゃん」
 勝手に僕の過去を捏造するなと、笑って続ける。営業所に帰る道中、相良は憑きものがとれたかのように晴れやかな表情で、助手席に座っていた。