「飲んでみたいなぁ、今作れる? それからもっと気楽に話してね」
「うん、分かった。ハーブティーは私も作りたいのだけれど、お水も火もないから無理だわ」
「そっか。そうよね。じゃ、とりあえず今は水筒にお水入れてきたからこれを飲みましょう。一気にいろいろ話すと混乱するでしょうし、今朝はここまでにして朝食にしない?」
「ありがとう、実は凄くおなかが空いているの」
 二人はサラダをつつきながら、バターを、塗ったパンを食べ始める。シンプルイズベスト、といえば聞こえの良い朝食だけれど、焼き立てパンは予想以上に美味しかった。
「知り合いの魔道具師に頼んで一通り使えるようにして貰いましょうか」
「ありがとう」
「二階もあるのよね? 腕はいいから、日が暮れるまでにしてもらえるはずよ」
 今から町まで行って頼んでくれると言う。リズは町に用事があるらしく、夕方また顔を出してくれるようだ。と、ここで不安が一つ。
「リズ、あの、……私、お金がなくて。あっ、私の世界のお金は持っているんだけれど、こっちの世界では使えないと思うの」
「あー、そうね。こっちのお金はこれよ」
 リズはポケットからコインをじゃらり取り出した机の上に並べる。銀と銅の硬貨で大きさは大小二種類。
「小銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨十枚で小銀貨一枚。私は持っていないけど、これ以外に小金貨と大金貨もあるわ。とりあえず魔道具屋への支払いは私が立て替えてあげるから大丈夫よ」
「そんな、会ったばかりなのに」
「いいのいいの。いずれ返してくれればいいから。それより、そうね。お礼っていうならそのハーブティーっていう飲み物、私に一番に飲ませてくれない?」
「もちろん。でも、そんなことでいいの?」
 ここまで親切にしてもらったお礼がハーブティーなんて申し訳なさすぎる。とはいえ、他にミオができることなんてないのだけれど。
「この世界で、ハーブティーを初めて飲めるんだから充分よ。じゃ、私、魔道具屋に行ってくるわね」
「何から何までありがとう。朝食もおいしかった」
「そう、よかった」 
 リズ手をひらひら振りながら、ちょっと身を屈め店の扉をくぐって出て行った。

 リズが帰ったあと、ミオは家の周りを探索することに。