とはいえ、修理は始まったばかり。しかたない、リズが置いていった水筒の水を飲もうとしたところで、妙案が頭に浮かぶ。
 カウンター席の向かいにある棚には、ハーブの缶や瓶をずらりと並べているけれど、それはすべてドライハーブ。
 ミオは「ちょっとお邪魔します」と作業中のフーロの後ろを通り抜け、奥の冷蔵庫へと向かう。
 中にはジップロックで小分けしたフレッシュハーブが幾つか入っていて、そのうちの一つとレモンを手にし、ペティーナイフを持って席へと戻る。
 選んだフレッシュハーブはミント。リズから渡された水筒にそれを入れ、半分にカットしたレモンを両手でぎゅっと絞って果汁を垂らす。最後に蓋をして軽くシェイクすると、即席ミント水の出来上がりだ。
 少し時間をおいてから氷を入れて飲めばさらに美味しいのだけれど、今日そこまでするのは無理。
 口に含めば爽やかなミントの風味が広がった。
 そのあとも、パンを食べながらミント水を飲み、お腹が十分膨れた頃にフーロが声をかけてきた。
「水道はできましたよ。ちょっと使ってみませんか?」
「はい、やりたいです」
 魔力で水を出す、なんてどうしていいかさっぱり分からない。ミオはちょっとわくわくしながらキッチンへと向かった。
「こうやって、蛇口の上に指をあて魔力を流してください。そうすれば水が出てきます」
「こうですか?」
 恐る恐る水道のヘッドのあたりに手をやると、ちょろちょろと水が流れてきた。おぉ、と心の中で感嘆の声を出す。
「はい、流れ始めたら指は離しても大丈夫ですよ。それから、流す魔力量によって水量が変わります。それはコンロやドライヤーでも同じですね」
 言われたとおりに、さらに指先に集中すると水量が増えた。指を離しても同じ量がずっと流れている。
「そうそう、で止めたいときは同じように水先を当て、水が止まるのをイメージして」
 言われたとおりにしてみるも、これは中々うまくいかない。一分ほどして水はとまったけれど、練習あるのみだな、と思う。それにしても。
「この水はどこからきているのですか?」
 魔法と言われればそれまでなのだけれど、出本が気になってしまう。