異世界ハーブ店、始めました。〜ハーブの効き目が規格外なのは、気のせいでしょうか〜

(どうしたっていうの?)
 何が起こったのかと考えを巡らせること数十秒。
 はたと、気づいて頭上を見る。
 そこにはクリーム色のリンデンの花。風に乗ってヒラヒラ、ヒラヒラ。ジークの青みを帯びた銀色の髪にふわりと落ちた。
 ミオはそれを摘むと、水筒を覗き見る。
 すると、少し残った液体にリンデンの花びらが数枚浮いているではないか。
「……安らぎのハーブ」
 ナイトティーにピッタリと言われるほどリンデンは鎮静効果の高いハーブだ。不眠に効くとされている。
「まさか?」
 もしや自分が作ったのは即効性の睡眠薬?
 ミオが焦って立ちあがろうとすると、その腰を抱え込むようにジークが寝返りを打った。膝の上で器用なことだ。
 ぎゅっとミオの腰にしがみつき、お腹に顔を埋めると肩を規則的に上下させる。
(まって、まって、まって!!)
 自分はアラサーにしては経験に乏しいのだ。
 しかもこんな顔面偏差値高い若者に縋るように抱き抱えられ、限界はすでに突破している。
 わたわたと慌て、手を伸ばし目の前の二人を起こそうとするも、そっちはさらに高鼾ときた。
 真っ赤になってるミオの膝の上、ジークが小さく「ミオ」と囁くも、
「ちょっと、皆、起きて〜〜!!」
 叫んだミオの声は虚しく消し飛んだ。
 まだまだ日は高い。
 ミオの一日はこれからだ。