異世界ハーブ店、始めました。〜ハーブの効き目が規格外なのは、気のせいでしょうか〜

 大きな水筒にはまだ四人分ほどのハーブティーが残っていた。甘い匂いがほのかに漂う。
「カモミールとラズベリーリーフのブレンドだから、……美白かな」
「びはく……」
 男三人が微妙な表情で水筒を見る。まったく必要ない効能だし、むしろ日に焼けていた方が精悍ではないかと思う。
「うーん、でもせっかくだから特別仕様にしてみてよ。今日は日差しが強いからミオにはちょうど良いでしょう?」
 風が吹くからリンデンの木の下は涼しいけれど、日差しは真夏のもの。帽子を被ってきたけれど、日焼けは必須。
 何やらワクワクする視線に背を押され、ミオ水筒を手に取った。
(カモミールには沈静、消炎作用もあるしどうせなら全ての効能が高まるように願ってみようかな)
 ハーブにはいくつもの効能がある。いつもはその内の一つが飲んでくれる人に役立つことを願うのだけれど、ものは試しとちょっと欲張ってみることに。
 なに、失敗してもこの三人ならきっと許してくれるはず。
 水筒を軽く揺する。キラキラの光はミオにしか見えない。きょとんとする三人にミオはできたわ、とちょっと得意げに笑いグラスにそれを淹いだ。
「へー、これが」
 ドイルが喉を鳴らしゴクゴクと飲む。
「味は変わらないんだな」
 ジークがヤロウティーを飲んだのは半分気を失いつつのこと。味わいながら飲むのはこれが初めてだ。
「やっぱりカモミールが一番好き。ミオ、沢山摘んで帰りましょうね」
 リズはお気に入りの味にご機嫌で、あっという間にグラスは空に。
 サワサワ、サワサワ。
 木陰の下を気持ちの良い風が吹き抜けた。
 ふわぁん、と欠伸が一つ。
 三人が揃って目を擦り、頭が重たげに垂れ出した。
 目がトロリとしだしたのを見て、ミオは飲もうとしていたグラスを置く。
 どうしたのかな、と首を傾げたところに、ポスッと肩に重みを感じた。首を横にすると、隣に座っていたジークの頭がミオの肩に乗っているではないか。しかもあれよあれよと言うまにずりずり落ちて、むにゃと一言、膝の上で落ち着いた。
 木漏れ日の下で無防備に目を閉じ、すやすや寝息を上げる美丈夫。
「えっ?」
 急にどうした。
 戸惑い視線を向かいに座る二人に向ければ、その巨躯が草むらに勢いよく投げ出された。
 微かな寝息にいびきが混じる。
「えっ、ええっ?」
 すやすや、ぐうぐう。ぐがっっ