ジークの身体にはあちこち擦り傷があるし、打撲や打ち身もあるが、この場合の怪我とは出血を伴う切り傷を言うのだろう。こんな綺麗な格好じゃ、皆に笑われるとうんざりした顔をしている。騎士の矜持に関わるらしい。
「でも、ドラゴンから私を守ってくれたじゃない」
「そうよ、あれに遭遇し生きているだけでも大したものよ」
「でも、退治したのはリーガドイズ様ですし。唯一の自慢話が勇者にあったことなんて、騎士としてどうなんでしょう」
エドなんて何匹倒したんだろう、絶対自慢してくると悔しそう。帰りに一匹何か出てこないかな、なんて物騒なことまで言い始めたので、ミオも苦笑いを零す。
「でも、私はジークに命を助けられたわ」
「うん、それは本当に良かった」
ジークはポン、とミオの頭に手を置く。あまりに自然な仕草にミオは目をパチリ。した方も、無意識に自分が置いた手に慌てパッと頭から離す。二人とも目が泳ぐ。
「そ、それじゃ、俺はこれで」
「う、うん、気をつけてね」
赤い顔で手を振り去って行くジーク。
ミオと一緒に見送りながら、リズは「先は長いな」と肩をすくめた。
「そうだ、リズ渡したいものがあるの」
「それじゃ、中に入っていい? 魔物退治が終わったとはいえ心配だから暫く一緒にいるわ」
いつも通りカウンター席に座ったリズにミオは一つだけ残していたカレンデュラ軟膏の瓶を手渡した。
「これが言っていた火傷の薬?」
「そうよ、リズに渡そうとひとつだけ残しておいたの。左腕痛むでしょ、使ってね」
「えっ?……」
パチパチと瞬きをしてリズがミオを見る。
その信じられない物を見るような瞳。
まさか、あれで気づかれていないと思っていたのかとミオこそびっくりする。脳筋か? そういえばジークも気づいた素振りはなかった。
(ま、いいか。今は寝たい)
人間の三大欲求で一番強いのは睡眠らしい。本当かどうか分からないが、安心した途端もの凄い眠気が襲ってきて身体が重い。
「リズ、私眠ってきていい?」
「えっ? あ、うん」
残り物のパンが戸棚、ハムと卵、ミント水が冷蔵庫にあることを告げミオはフラフラと二階に上がっていった。リズは半ば呆然としながらその後ろ姿を眺め、見えなくなったところで頭を抱えた。
「……バレてないよな」
「でも、ドラゴンから私を守ってくれたじゃない」
「そうよ、あれに遭遇し生きているだけでも大したものよ」
「でも、退治したのはリーガドイズ様ですし。唯一の自慢話が勇者にあったことなんて、騎士としてどうなんでしょう」
エドなんて何匹倒したんだろう、絶対自慢してくると悔しそう。帰りに一匹何か出てこないかな、なんて物騒なことまで言い始めたので、ミオも苦笑いを零す。
「でも、私はジークに命を助けられたわ」
「うん、それは本当に良かった」
ジークはポン、とミオの頭に手を置く。あまりに自然な仕草にミオは目をパチリ。した方も、無意識に自分が置いた手に慌てパッと頭から離す。二人とも目が泳ぐ。
「そ、それじゃ、俺はこれで」
「う、うん、気をつけてね」
赤い顔で手を振り去って行くジーク。
ミオと一緒に見送りながら、リズは「先は長いな」と肩をすくめた。
「そうだ、リズ渡したいものがあるの」
「それじゃ、中に入っていい? 魔物退治が終わったとはいえ心配だから暫く一緒にいるわ」
いつも通りカウンター席に座ったリズにミオは一つだけ残していたカレンデュラ軟膏の瓶を手渡した。
「これが言っていた火傷の薬?」
「そうよ、リズに渡そうとひとつだけ残しておいたの。左腕痛むでしょ、使ってね」
「えっ?……」
パチパチと瞬きをしてリズがミオを見る。
その信じられない物を見るような瞳。
まさか、あれで気づかれていないと思っていたのかとミオこそびっくりする。脳筋か? そういえばジークも気づいた素振りはなかった。
(ま、いいか。今は寝たい)
人間の三大欲求で一番強いのは睡眠らしい。本当かどうか分からないが、安心した途端もの凄い眠気が襲ってきて身体が重い。
「リズ、私眠ってきていい?」
「えっ? あ、うん」
残り物のパンが戸棚、ハムと卵、ミント水が冷蔵庫にあることを告げミオはフラフラと二階に上がっていった。リズは半ば呆然としながらその後ろ姿を眺め、見えなくなったところで頭を抱えた。
「……バレてないよな」



