気障な台詞にミオは目をパチクリとする。おまけに『神の気まぐれ』ときた、前回の転移者に感謝しつつ劣等感をもつミオとしてはそこに触れてほしくない。
「……あの、お願いしたいのは一階のキッチンにあるものと、それから二階のお風呂、あとドライヤーもできますか?」
「できますよ。ではまず一階から見ていきますね。あっ、リズさんから預かったお昼ご飯が荷車にあります」
 荷車を見れば、布袋が一つ入っていた。きっと町で買ってくれたのだろうと、リズの人の良さそうな顔を思い出し感謝しつつそれを持つ。
 店内に入ると、さっそくフーロをキッチンへと案内した。
「ここです。コンロと水道、あと冷蔵庫とかオーブンもあります」
 フーロはふむふむとそれらを開けたり閉めたり。一通り見終わったところでミオの方を向く。
「どれも魔石を埋めれば使えるようになりますし、その方が新しい魔道具を用意するより早くて安いです」
「では、それでお願いします」
 家電はすべて新品。それが使えるに越したことはないし、お金がないので安く上げたいところ。
「承知いたしました。あっ、それなりに時間はかかるんで、お昼食べちゃってください」
 フーロは道具箱を開けると、そこには色とりどりの石が入っていた。赤、青、黄色、緑、ミオの目には一カラット以上の大きな宝石に見えるけれど、それが魔石だ。
 フーロが愛想の良い顔から真剣な表情に変わったので、邪魔をしてはいけないとミオはテーブル席へと移動した。昨日は夜ご飯はを食べてないし、朝もバゲットとサラダだけ、おまけに広い庭をハーブを探して歩いたのでお腹がすいている。
 布から取り出すと、ハムとクリームチーズが挟まったベーグルと、ブルーベリーを練り込んだパン。それから、レーズンと胡桃のバゲットや、揚げパンなんかも入っている。町にはパン屋があるようで、どれも美味しそう。
(主食は小麦かな)
 この様子だと、お米はもう食べられないかも知れない。
 日本人としては少々、いや、かなり切実な問題だけれど、食事があるだけ幸せというもの。それにパンは大好きだ。
  ベーグルを齧れば、絶妙な塩加減がチーズの濃厚な風味を引き立たせていてとても美味しいし、もちっとしたベーグルの触感も良い。
(味が濃いからさっぱりしたミントティーがあいそう)