しかし、ミオは表情を崩さない。すぐそばにカーサスがいるのだ、平然と余裕だと見せるかのように口角を少し上げた。もちろんただの痩せ我慢だ。
「どうしてこんなことを」
必要なら俺がするのに、と小さく呟くジークにミオは首を振る。
(そんなことさせれない。それに、作ったのはいいけれど試すこともせずに人に手渡すことはできないわ)
もとよりこうするつもりだった。
ヤロウの時は成り行きで、ミオのあずかり知らないところで話が進んだ。でも、今回は違う。
意思を持って作ったのだから、効果を確かめる責務があると思っていた。
(ここでカレンデュラ軟膏を使うことを認めさせないと。そのためならこのぐらいの火傷大したことないわ)
自分のせいで火傷を負ったサザリンは、何があっても助けたい。ただその一心だ。
ジークの指が腕から離れる。ぺったりとつけられた黄色く透ける液体の向こうで皮膚の爛れが盛り上がりそして平らになっていった。同時に赤かった皮膚が元の色に戻る。
「こ、これは……」
小さい声、しかしそこには驚愕が滲んでいる。信じられない物を目にしたとカーサスの双眸が大きく見開き、息まで止めているよう。
しかし驚いているのはミオも同じ。ヒリヒリと焼け付くような痛みが消え皮膚の引きつる感覚もない。
(まさかこんなに即効性があるなんて)
効くだろうとは思っていた。けれどここまでとは。
パチクリしながら顔を上げれば、ジークと目があう。ハーブの効果を身をもって知っているジークだけは、当然とばかりにミオの腕を見ていた。しかもちょっと誇らし気に。
「カーサス様、ミオにサザリン様の手当ての許可を」
「い、いや。しかし……」
ジークに詰め寄られカーサスはミオの腕とベッドを交互に見る。
火傷が治る様を目の前で見てもなお、先祖の言葉を守るべきではと考えあぐねているようだ。
すると、ベッドから弱々しい声が聞こえた。
「お兄様……」
掠れるような声。サザリンが包帯を巻かれた腕を伸ばしている。顔だけだと思っていた火傷は首や腕にまでおよんでいた。
「サザリン、目が覚めたか。何か飲み物でも……」
「……ミオさんの」
「えっ?」
「ミオさんの作ってくれた薬を」
「しかし、あれは……」
「では、代わりに、ドラゴンの炎に焼かれた皮膚……を、再生できる薬を、持って……きて」
「どうしてこんなことを」
必要なら俺がするのに、と小さく呟くジークにミオは首を振る。
(そんなことさせれない。それに、作ったのはいいけれど試すこともせずに人に手渡すことはできないわ)
もとよりこうするつもりだった。
ヤロウの時は成り行きで、ミオのあずかり知らないところで話が進んだ。でも、今回は違う。
意思を持って作ったのだから、効果を確かめる責務があると思っていた。
(ここでカレンデュラ軟膏を使うことを認めさせないと。そのためならこのぐらいの火傷大したことないわ)
自分のせいで火傷を負ったサザリンは、何があっても助けたい。ただその一心だ。
ジークの指が腕から離れる。ぺったりとつけられた黄色く透ける液体の向こうで皮膚の爛れが盛り上がりそして平らになっていった。同時に赤かった皮膚が元の色に戻る。
「こ、これは……」
小さい声、しかしそこには驚愕が滲んでいる。信じられない物を目にしたとカーサスの双眸が大きく見開き、息まで止めているよう。
しかし驚いているのはミオも同じ。ヒリヒリと焼け付くような痛みが消え皮膚の引きつる感覚もない。
(まさかこんなに即効性があるなんて)
効くだろうとは思っていた。けれどここまでとは。
パチクリしながら顔を上げれば、ジークと目があう。ハーブの効果を身をもって知っているジークだけは、当然とばかりにミオの腕を見ていた。しかもちょっと誇らし気に。
「カーサス様、ミオにサザリン様の手当ての許可を」
「い、いや。しかし……」
ジークに詰め寄られカーサスはミオの腕とベッドを交互に見る。
火傷が治る様を目の前で見てもなお、先祖の言葉を守るべきではと考えあぐねているようだ。
すると、ベッドから弱々しい声が聞こえた。
「お兄様……」
掠れるような声。サザリンが包帯を巻かれた腕を伸ばしている。顔だけだと思っていた火傷は首や腕にまでおよんでいた。
「サザリン、目が覚めたか。何か飲み物でも……」
「……ミオさんの」
「えっ?」
「ミオさんの作ってくれた薬を」
「しかし、あれは……」
「では、代わりに、ドラゴンの炎に焼かれた皮膚……を、再生できる薬を、持って……きて」



