ここに向かう途中、ドラゴンの炎でできた火傷は治りにくいと聞いた。いろいろと心配だ。
「ジーク、ひとまずこれだけあれば大丈夫だと思う。家まで送ってくれる?」
「分かった。ドイル隊長、ミオは火傷に効く薬を作ろうとしています。引き続きミオの護衛に当たらせてください」
「是非頼む。あの辺りはリーガドイズが守っているが、念のため店の前にもう一人騎士を向かわせよう。残っているのは雑魚ばかりとはいえ、警備範囲が広く人員はそうさけない」
「問題ありません」
ミオはリュックの口をぎゅっとして、それを背負う。中身は花なので重くはない。
ガサリ、低木が揺れた。
はっと、二人が剣を構えた先から現れたのは、グルルっと唸り声を上げ唾液を滴らす大きな狼。
動物園で遠目にしか見たことないが、明らかにミオの知っているものの五倍はある。この世界、何でもでかいのか。
「フェンリル!」
ジークが剣を構える手にぎゅっと力をこめると、剣筋を塞ぐようにドイルが立った。
「行け」
「でも、あいつは獰猛で。隊長は怪我を……」
「お前、いったい誰の心配をしているんだ」
やれやれ、と言わんばかりの呆れ口調。背後から見えたのはニヤリと笑う口元だ。
ジークは僅かに逡巡したのち、ミオに向かって「走れ」と囁いた。背を押し前を走らせながら、ジークは背後も気にする。
しかし数秒後、聞こえたのはフェンリルの断末魔。おそらく一撃だろう。
「全く、勇者御一行ってのは、化け物揃いか」
息を切らし走るミオの耳に微かにそんなぼやきが聞こえた。
店の扉を閉めると、ミオはふぅ、と息を吐く。
ジーク曰く、こんな扉では魔物を防ぐ盾にならないらしいが、それでも野晒しより幾分か安心はするもので。
「ドイル隊長はもう一人騎士を向かわすって言ってくれたけれど、どうやって連絡をとっているの?」
「隊長と小隊長の間を伝書鳩が飛んでいる。近くの隊に連絡がいっているはずだ」
そこは昔ながらの手段らしい。うっかり伝書鳩が食べられることはないのかと聞けば、俊敏だからほぼ問題なく機能すると答えが返ってきた。ほぼがちょっと心配になる。
しかし、ジークもいるし勇者もいる。ここは自分の責務を果たそうと、ミオはリュックを下ろし口を縛っていた紐を解く。
「ジーク、上の棚からボールをあるだけ出して。それからトレーも」
「ジーク、ひとまずこれだけあれば大丈夫だと思う。家まで送ってくれる?」
「分かった。ドイル隊長、ミオは火傷に効く薬を作ろうとしています。引き続きミオの護衛に当たらせてください」
「是非頼む。あの辺りはリーガドイズが守っているが、念のため店の前にもう一人騎士を向かわせよう。残っているのは雑魚ばかりとはいえ、警備範囲が広く人員はそうさけない」
「問題ありません」
ミオはリュックの口をぎゅっとして、それを背負う。中身は花なので重くはない。
ガサリ、低木が揺れた。
はっと、二人が剣を構えた先から現れたのは、グルルっと唸り声を上げ唾液を滴らす大きな狼。
動物園で遠目にしか見たことないが、明らかにミオの知っているものの五倍はある。この世界、何でもでかいのか。
「フェンリル!」
ジークが剣を構える手にぎゅっと力をこめると、剣筋を塞ぐようにドイルが立った。
「行け」
「でも、あいつは獰猛で。隊長は怪我を……」
「お前、いったい誰の心配をしているんだ」
やれやれ、と言わんばかりの呆れ口調。背後から見えたのはニヤリと笑う口元だ。
ジークは僅かに逡巡したのち、ミオに向かって「走れ」と囁いた。背を押し前を走らせながら、ジークは背後も気にする。
しかし数秒後、聞こえたのはフェンリルの断末魔。おそらく一撃だろう。
「全く、勇者御一行ってのは、化け物揃いか」
息を切らし走るミオの耳に微かにそんなぼやきが聞こえた。
店の扉を閉めると、ミオはふぅ、と息を吐く。
ジーク曰く、こんな扉では魔物を防ぐ盾にならないらしいが、それでも野晒しより幾分か安心はするもので。
「ドイル隊長はもう一人騎士を向かわすって言ってくれたけれど、どうやって連絡をとっているの?」
「隊長と小隊長の間を伝書鳩が飛んでいる。近くの隊に連絡がいっているはずだ」
そこは昔ながらの手段らしい。うっかり伝書鳩が食べられることはないのかと聞けば、俊敏だからほぼ問題なく機能すると答えが返ってきた。ほぼがちょっと心配になる。
しかし、ジークもいるし勇者もいる。ここは自分の責務を果たそうと、ミオはリュックを下ろし口を縛っていた紐を解く。
「ジーク、上の棚からボールをあるだけ出して。それからトレーも」



