自分の部屋につくなり、女房からのお願いを参考に考えていた。

 (けんこうにならないとなにもできないなんて、たいへんじゃん!でもどうやろう?)

 杏子だけ健康になっても意味はない。

 皆が元気に過ごしてほしい。

 どうすれば、皆が元気に健康に過ごせるのか思考を巡らせていると一つの案が降って来た。


 「これだ!これなら、みんなをげんきにさせられるよ!」


 覚えたての拙い字で紙に書いて読むと、字の色が赤黒く変化した。


 「あれ?まあ、いっか」


 そんなこともありつつ、紙を灯台で燃やすと御簾から光が入って来た。

 真夏でもないのに光が入って来るなんて何があったのだろうか?

 部屋から出ると、美しい庭園の一角が光輝いていた。

 押さえきれない好奇心のまま、草履をはいて外に出ると黄色い菊が一面に咲きほこっていた。


 「きれい......!」


 (まさか、ねがいがかなうなんて!)

 杏子が願ったのは黄色い菊が欲しいというもの。

 黄色の菊には長寿の意味がある。

 実際に効果があるのかは知らないが、みんなが元気になってほしいと願ってこのお願いをした。

 するとどうだろう。

 庭が菊畑となった。


 「杏子、大丈夫か⁉」


 菊畑を見ているといつの間にか父と紀子が隣にいた。

 その後ろには柏陽と右近の姿もある。


 「あ、ちちうえ。みてください。わたしのおねがいがこうなりました」

 「先ほどの光は杏子のやったの⁉」


 普段は驚くことがない紀子も驚いていた。


 「はい!がんばりました」


 その無邪気な声に父は頭を抱え込んで、数秒後


 「杏子。これからは一人でぜったいに呪いをしてはいけない。杏子の力は強すぎるからな」

 「?わかりました」


 何が強いのか全く分からないが、杏子は了承した。

 この出来事はやがて、杏子の黒歴史となるのだった。

 ちなみに、杏子が作り出した菊は願い通り万病の薬となって重宝されたのであった。