「何をやって、って何故杏子がここに......?」
後ろにいる雪子から声がかかったが、遅かった。
一番来て欲しくない人が来てしまった。
「それはこちらが言いたいです。何故こちらへ?」
色々と知られている東宮にはお貴族様モードにする必要はないが、こうでもしないと体が動いてしまう。
ここは弘徽殿なので応対するのは弘徽殿がしないといけないのだが、弘徽殿は東宮を見て固まって全く役に立たなかった。
「柏陽や右近は執拗に言っていたからだ。何かあると思って行ってみたが、何故いる?ここは弘徽殿だぞ?」
(......後で話し合いが必要みたいね)
東宮の後ろにいる兄二人は後で何をされるのだろうか?
二人の体が心配である。
「わたくしは弘徽殿様から女房を頂くためにこちらへ来ました。もう終わったみたいなので、関係のないわたくし達は帰りますね」
にっこり笑ってこの場から出ようとしたが、出られなかった。
杏子の右手を東宮が掴んだせいである。
「は、離してください......!」
「......。杏子、今日の夜、行くから」
何か不穏な間を置いた後、東宮は離してくれた。
(東宮は一体今日の夜どこへいくの?夜に出歩くなんて何をするの?夜ではいけないこと......。あ、呪いか!)
杏子の頭では東宮が呪いをするために外へ人がいないところへ行くという結論が下された。
「分かりました。わたくしでよければ力になりますよ」
(呪いはわたくの得意分野なので)
ゆったりと笑みを浮かべて、杏子は応じてしまった。
応じたことで、東宮の雰囲気が柔らかくなり、東宮が杏子のことしか見ていないことに気づいていないのは杏子だけだった。
「そうか。では夜にまた会おう」
「準備して待っていますね」
部屋から出ていく東宮と何かこちらを見てくる兄二人を杏子は見送った。
ちなみに東宮が行くのは杏子の宅、飛香舎で目的は杏子であることに杏子は知らなかった。
「あの、杏子様。準備って......」
雪子が心配そうにこちらを見てくる。
(やっぱり弘徽殿のところにいるのは辛いのですね)
杏子はそう思ったが、雪子は別に弘徽殿のことなどではなく東宮の準備について心配しているのである。
「雪子様、大丈夫ですか?」
「え、ええ?わたくしは大丈夫ですけど、その準備は大丈夫なのですか?」
「東宮が持って来てくれるので安心してください。弘徽殿様、本日はありがとうございました。それでは失礼しますね」
杏子は大勢の側仕えを引き連れて外を出たが、その時弘徽殿の目が狂いだしていくのを見ていなかった。
後ろにいる雪子から声がかかったが、遅かった。
一番来て欲しくない人が来てしまった。
「それはこちらが言いたいです。何故こちらへ?」
色々と知られている東宮にはお貴族様モードにする必要はないが、こうでもしないと体が動いてしまう。
ここは弘徽殿なので応対するのは弘徽殿がしないといけないのだが、弘徽殿は東宮を見て固まって全く役に立たなかった。
「柏陽や右近は執拗に言っていたからだ。何かあると思って行ってみたが、何故いる?ここは弘徽殿だぞ?」
(......後で話し合いが必要みたいね)
東宮の後ろにいる兄二人は後で何をされるのだろうか?
二人の体が心配である。
「わたくしは弘徽殿様から女房を頂くためにこちらへ来ました。もう終わったみたいなので、関係のないわたくし達は帰りますね」
にっこり笑ってこの場から出ようとしたが、出られなかった。
杏子の右手を東宮が掴んだせいである。
「は、離してください......!」
「......。杏子、今日の夜、行くから」
何か不穏な間を置いた後、東宮は離してくれた。
(東宮は一体今日の夜どこへいくの?夜に出歩くなんて何をするの?夜ではいけないこと......。あ、呪いか!)
杏子の頭では東宮が呪いをするために外へ人がいないところへ行くという結論が下された。
「分かりました。わたくしでよければ力になりますよ」
(呪いはわたくの得意分野なので)
ゆったりと笑みを浮かべて、杏子は応じてしまった。
応じたことで、東宮の雰囲気が柔らかくなり、東宮が杏子のことしか見ていないことに気づいていないのは杏子だけだった。
「そうか。では夜にまた会おう」
「準備して待っていますね」
部屋から出ていく東宮と何かこちらを見てくる兄二人を杏子は見送った。
ちなみに東宮が行くのは杏子の宅、飛香舎で目的は杏子であることに杏子は知らなかった。
「あの、杏子様。準備って......」
雪子が心配そうにこちらを見てくる。
(やっぱり弘徽殿のところにいるのは辛いのですね)
杏子はそう思ったが、雪子は別に弘徽殿のことなどではなく東宮の準備について心配しているのである。
「雪子様、大丈夫ですか?」
「え、ええ?わたくしは大丈夫ですけど、その準備は大丈夫なのですか?」
「東宮が持って来てくれるので安心してください。弘徽殿様、本日はありがとうございました。それでは失礼しますね」
杏子は大勢の側仕えを引き連れて外を出たが、その時弘徽殿の目が狂いだしていくのを見ていなかった。