うぅぅ......。
緊張します......。
わたくし、雪子は、今目の前で行われていることを見てそれを切実に感じます。
あたりにいるのはわたくしよりも高位な方が大勢いらっしゃるからでしょう。
入れ替わりを元に戻して、わたくしは杏子様に仕える女房の一人としてこの場にいます。
公的には淑景舎は関係ありませんから。
「弘徽殿様、本日はわたくしのためにありがとうございます」
そうおっしゃるのはわたくしの恩人である杏子様です。
優雅に微笑む杏子様も好きですけど、感情を乗せた表情がころころと動く杏子様の方がわたくしは好きです。
あ......、話が逸れてしまいましたね。
杏子様は弘徽殿様に辛く扱われている侍女達を保護しようと、弘徽殿様と交渉しているのです。
ただ耐えるだけで助けを求めることができない姿は昔のわたくしやまだ幼かった玲子を彷彿させます。
わたくしは杏子様なような影響力も権力もありませんが、できることはしたつもりです。
ここ数日、大変でしたから。
「......。いえいえ。わたくしの女房が飛香舎様に仕えて下さるなんて嬉しいことです。それで、あの、本当にするのですか?わたくしは特に問題ないのですけど身の程知らずなこ......女房を貰ってくださるなんて......。それに世間の例外となりません?」
こいつと呼ぼうとしたのでしょう。
杏子様の鋭い視線で言い換えていますが、この場にいる者は何を言おうとしたのか分かっています。
この場に柏陽様がいらっしゃたら、きっと怒りを必死に隠している杏子様を押さえるでしょうね。
ですが柏陽様と右近様はいません。
お二人は東宮の気を引いているそうです。
「弘徽殿様。わたくし、少しやりたいことがあるので、先進めますね。職場を変えたい方はいらっしゃいますか?今日限り、大歓迎です!」
弘徽殿様の後ろに控える女房達はお互いの顔色を窺っています。
詳しい話は伺っていなさそうですね。
ちらっと横目で見ると、心得たという表情をした玲子が説明をしてくれました。
「飛香舎様は一人一人、個人の立場を保証して下さる。意思を尊重して新しい職場を与えて下さる。それに伝手で殿方との婚約もして下さるそうだ」
「飛香舎様は私達の後ろ盾になって下さるのですか?」
「わたくしで良ければ、あなたたちの後ろ盾となりますよ」
「あの!私、飛香舎様のところでお仕えします!」
「わたくしも、良いですか?」
「保証していただけるのなら......!」
杏子様が認めた瞬間、女房達が動きました。
欲にまみれたような姿ではありません。
必死に杏子様の手を取ろうと伸ばしている姿です。
「わたくしについていきたい方はこちらに来てください。皆さんがそちらにいるとわたくしが把握できないので」
あら、卯紗の目が呆れていますね。
杏子様を訝し気に見ています。
杏子様は把握しているのでしょうか?
きっと把握しているのでしょうね。
どうやら大半の者がこちらに移るそうです。
弘徽殿様のところに控えていらっしゃるのは、わたくしを嬉々として虐めた筆頭と他数名になりました。
弘徽殿様様の顔は取り繕った貴族女性の微笑が浮かんですが、内心は焦っているでしょうね。
わずかに崩れてますから。
「柏陽、右近、こちらに何かあるのか?」
「東宮?!女性の部屋に入るのは.......」
「ここは私の妃の部屋だ」
この声は東宮?!
周りの雑音にかき消されながらもこちらに向かってくる声が聞こえます。
「杏」
「何をやって、って何故杏子がここに.......?」
わたくしが伝える前に東宮が来てしまいました。
これからどうしましょう?
緊張します......。
わたくし、雪子は、今目の前で行われていることを見てそれを切実に感じます。
あたりにいるのはわたくしよりも高位な方が大勢いらっしゃるからでしょう。
入れ替わりを元に戻して、わたくしは杏子様に仕える女房の一人としてこの場にいます。
公的には淑景舎は関係ありませんから。
「弘徽殿様、本日はわたくしのためにありがとうございます」
そうおっしゃるのはわたくしの恩人である杏子様です。
優雅に微笑む杏子様も好きですけど、感情を乗せた表情がころころと動く杏子様の方がわたくしは好きです。
あ......、話が逸れてしまいましたね。
杏子様は弘徽殿様に辛く扱われている侍女達を保護しようと、弘徽殿様と交渉しているのです。
ただ耐えるだけで助けを求めることができない姿は昔のわたくしやまだ幼かった玲子を彷彿させます。
わたくしは杏子様なような影響力も権力もありませんが、できることはしたつもりです。
ここ数日、大変でしたから。
「......。いえいえ。わたくしの女房が飛香舎様に仕えて下さるなんて嬉しいことです。それで、あの、本当にするのですか?わたくしは特に問題ないのですけど身の程知らずなこ......女房を貰ってくださるなんて......。それに世間の例外となりません?」
こいつと呼ぼうとしたのでしょう。
杏子様の鋭い視線で言い換えていますが、この場にいる者は何を言おうとしたのか分かっています。
この場に柏陽様がいらっしゃたら、きっと怒りを必死に隠している杏子様を押さえるでしょうね。
ですが柏陽様と右近様はいません。
お二人は東宮の気を引いているそうです。
「弘徽殿様。わたくし、少しやりたいことがあるので、先進めますね。職場を変えたい方はいらっしゃいますか?今日限り、大歓迎です!」
弘徽殿様の後ろに控える女房達はお互いの顔色を窺っています。
詳しい話は伺っていなさそうですね。
ちらっと横目で見ると、心得たという表情をした玲子が説明をしてくれました。
「飛香舎様は一人一人、個人の立場を保証して下さる。意思を尊重して新しい職場を与えて下さる。それに伝手で殿方との婚約もして下さるそうだ」
「飛香舎様は私達の後ろ盾になって下さるのですか?」
「わたくしで良ければ、あなたたちの後ろ盾となりますよ」
「あの!私、飛香舎様のところでお仕えします!」
「わたくしも、良いですか?」
「保証していただけるのなら......!」
杏子様が認めた瞬間、女房達が動きました。
欲にまみれたような姿ではありません。
必死に杏子様の手を取ろうと伸ばしている姿です。
「わたくしについていきたい方はこちらに来てください。皆さんがそちらにいるとわたくしが把握できないので」
あら、卯紗の目が呆れていますね。
杏子様を訝し気に見ています。
杏子様は把握しているのでしょうか?
きっと把握しているのでしょうね。
どうやら大半の者がこちらに移るそうです。
弘徽殿様のところに控えていらっしゃるのは、わたくしを嬉々として虐めた筆頭と他数名になりました。
弘徽殿様様の顔は取り繕った貴族女性の微笑が浮かんですが、内心は焦っているでしょうね。
わずかに崩れてますから。
「柏陽、右近、こちらに何かあるのか?」
「東宮?!女性の部屋に入るのは.......」
「ここは私の妃の部屋だ」
この声は東宮?!
周りの雑音にかき消されながらもこちらに向かってくる声が聞こえます。
「杏」
「何をやって、って何故杏子がここに.......?」
わたくしが伝える前に東宮が来てしまいました。
これからどうしましょう?