月出る夜、飛香舎には、主である杏子と侍女の卯紗子、事情を知る柏陽と右近。
それに、参加をする雪子と玲子の姿があった。
「緊張でお腹が痛くなってきました......」
身分違いな者に囲まれて、まだ帝が来ていないのに雪子の顔は悪く、お腹をさすっていた。
「大丈夫ですか、淑景舎様?」
「杏子、淑景舎殿の顔が真っ青だぞ」
「雪子様、白湯をお持ちしましょうか?」
杏子、柏陽、右近は兄妹揃って雪子のことを心配して、介護していた。
「杏子様、大丈夫です。その、まだ、慣れていないんです。これはよくあるので、心配かけてしまって申し訳ございません」
「それなら、良かったです」
「......こう見るとそっくりですね」
「そうだな。まさか、淑景舎様がここまで杏子に似ているとは思っていなかったです」
微笑みを交わす杏子と雪子に柏陽と右近は見つめていた。
妹だからどちらが杏子なのかは区別できる。
世界には自分と同じ見た目の人が三人いると言われているがこれほどだったとは。
杏子と雪子をただ見つめることしかできない時、襖が開いた。
「これは、杏子だけではなく雪子もいるのか」
「わたくしの条件に必要な方なので、同席しています」
「そうか。それで、杏子。条件とは?」
ここにいる者の中で知っているのは、杏子と卯紗子、雪子と玲子だけ。
柏陽と右近は杏子に呼ばれただけで、条件については何も知らない。
もちろん、帝も。
「わたくしと雪子様を交換するのです」
「どういうことだ、杏子?」
女御である杏子の敬意を忘れて、柏陽は問いた。
右近と帝は動かない。
「そのままの意味ですよ。わたくしが雪子様の身代わりとなって生活するのです。この入れ替わりが東宮にばれないこと。これが条件です」
「淑景舎様。断っても大丈夫です。このような意味不明のことは無視しても大丈夫です。身分とかは気にせずに申し出て下さい」
右近が大変失礼なことを言っているが、これは雪子がこのような、訳が分からないことをしないようにするためである。
常に妹である杏子の傍で見ていたからこそ分かる。
これは、止めることが出来ない。
だから、まだ実行していないうちに止めようとしていた。
でも、右近の行動を裏切るような言葉が隣から聞こえた。
「右近様。わたくしはお断りしません。その、この条件を考えたのはわたくしなので」
「雪子が考えたのか⁉」
これには帝も驚く。
大人しそうで現実をみている雪子がこの条件を考えたのか。
信じることが出来ないのもしょうがない。
「帝。この条件の大本は雪子様が考えてくれたのです。わたくしが加えたのは東宮にばれないように、です」
「なんちゅうものを付け加えているんだ......」
「やっぱり杏子は杏子だね」
頭に手を置いて、抱えている柏陽と苦笑している右近の様子が直ぐに浮かぶ。
「......分かった。この条件を許可する」
「やりましたね!」
「おい!せめて、誰もいない時にやってくれ!」
大興奮して喜びを体で表現していたが、柏陽によって止められた。
これは一種の感情表現なのに、止める必要はないと思っているのは杏子だけだった。
杏子の行動は全く先が読めないことに冷や冷やする。
「柏陽、止めなくても良いぞ。この条件は湊には伝えないでおこう。条件達成できるよう力を尽くせ」
「分かりました」
「では失礼」
そう言ってて帝が出ていくと、どこからともなく溜息が漏れ出た。
「杏子様は凄いですね。わたくしは帝が目の前にいるだけで緊張してしまい、何もできませんでした」
「そんなことないですよ。わたくだって緊張してましたから」
たとえ祖父でも雲よりもはるかに高い帝。
緊張しないわけない。
「え⁉何言ってるの?杏子は普通に会話していたよ」
「何が緊張した、だ。こっちはいつ何かやらかすか体が震えていたぞ!」
だが、兄二人は信じてくれなかった。
そして、言葉を発さずとも全力で首を前に振っている侍女二人も信じていない。
なんでなんだろう?
「それで、柏陽兄様と右近兄様は協力してくれますよね?」
「はぁ......。協力するしかないだろう。帝が認めた以上この条件は非公開ながら成立している。杏子はともかく淑景舎様が心配だからな」
「もちろん私も協力します。女御様のお願いですから。一文官である私は断れませんよ」
柏陽は呆れながらも協力してくれることとなった。
右近は真面目そうにしているが、『こんな面白い情報、しがみ付くしかないよね』という副音声が聞こえてくる。
「では早速今日から始めましょう。兄様方は一旦外に出て下さい」
男がいなくなった空間で、杏子と雪子は向き合うように座った。
「では、交換と行きましょうか」
それに、参加をする雪子と玲子の姿があった。
「緊張でお腹が痛くなってきました......」
身分違いな者に囲まれて、まだ帝が来ていないのに雪子の顔は悪く、お腹をさすっていた。
「大丈夫ですか、淑景舎様?」
「杏子、淑景舎殿の顔が真っ青だぞ」
「雪子様、白湯をお持ちしましょうか?」
杏子、柏陽、右近は兄妹揃って雪子のことを心配して、介護していた。
「杏子様、大丈夫です。その、まだ、慣れていないんです。これはよくあるので、心配かけてしまって申し訳ございません」
「それなら、良かったです」
「......こう見るとそっくりですね」
「そうだな。まさか、淑景舎様がここまで杏子に似ているとは思っていなかったです」
微笑みを交わす杏子と雪子に柏陽と右近は見つめていた。
妹だからどちらが杏子なのかは区別できる。
世界には自分と同じ見た目の人が三人いると言われているがこれほどだったとは。
杏子と雪子をただ見つめることしかできない時、襖が開いた。
「これは、杏子だけではなく雪子もいるのか」
「わたくしの条件に必要な方なので、同席しています」
「そうか。それで、杏子。条件とは?」
ここにいる者の中で知っているのは、杏子と卯紗子、雪子と玲子だけ。
柏陽と右近は杏子に呼ばれただけで、条件については何も知らない。
もちろん、帝も。
「わたくしと雪子様を交換するのです」
「どういうことだ、杏子?」
女御である杏子の敬意を忘れて、柏陽は問いた。
右近と帝は動かない。
「そのままの意味ですよ。わたくしが雪子様の身代わりとなって生活するのです。この入れ替わりが東宮にばれないこと。これが条件です」
「淑景舎様。断っても大丈夫です。このような意味不明のことは無視しても大丈夫です。身分とかは気にせずに申し出て下さい」
右近が大変失礼なことを言っているが、これは雪子がこのような、訳が分からないことをしないようにするためである。
常に妹である杏子の傍で見ていたからこそ分かる。
これは、止めることが出来ない。
だから、まだ実行していないうちに止めようとしていた。
でも、右近の行動を裏切るような言葉が隣から聞こえた。
「右近様。わたくしはお断りしません。その、この条件を考えたのはわたくしなので」
「雪子が考えたのか⁉」
これには帝も驚く。
大人しそうで現実をみている雪子がこの条件を考えたのか。
信じることが出来ないのもしょうがない。
「帝。この条件の大本は雪子様が考えてくれたのです。わたくしが加えたのは東宮にばれないように、です」
「なんちゅうものを付け加えているんだ......」
「やっぱり杏子は杏子だね」
頭に手を置いて、抱えている柏陽と苦笑している右近の様子が直ぐに浮かぶ。
「......分かった。この条件を許可する」
「やりましたね!」
「おい!せめて、誰もいない時にやってくれ!」
大興奮して喜びを体で表現していたが、柏陽によって止められた。
これは一種の感情表現なのに、止める必要はないと思っているのは杏子だけだった。
杏子の行動は全く先が読めないことに冷や冷やする。
「柏陽、止めなくても良いぞ。この条件は湊には伝えないでおこう。条件達成できるよう力を尽くせ」
「分かりました」
「では失礼」
そう言ってて帝が出ていくと、どこからともなく溜息が漏れ出た。
「杏子様は凄いですね。わたくしは帝が目の前にいるだけで緊張してしまい、何もできませんでした」
「そんなことないですよ。わたくだって緊張してましたから」
たとえ祖父でも雲よりもはるかに高い帝。
緊張しないわけない。
「え⁉何言ってるの?杏子は普通に会話していたよ」
「何が緊張した、だ。こっちはいつ何かやらかすか体が震えていたぞ!」
だが、兄二人は信じてくれなかった。
そして、言葉を発さずとも全力で首を前に振っている侍女二人も信じていない。
なんでなんだろう?
「それで、柏陽兄様と右近兄様は協力してくれますよね?」
「はぁ......。協力するしかないだろう。帝が認めた以上この条件は非公開ながら成立している。杏子はともかく淑景舎様が心配だからな」
「もちろん私も協力します。女御様のお願いですから。一文官である私は断れませんよ」
柏陽は呆れながらも協力してくれることとなった。
右近は真面目そうにしているが、『こんな面白い情報、しがみ付くしかないよね』という副音声が聞こえてくる。
「では早速今日から始めましょう。兄様方は一旦外に出て下さい」
男がいなくなった空間で、杏子と雪子は向き合うように座った。
「では、交換と行きましょうか」