副部長として、サックスのパートリーダーとして頑張っている。更にはプライベートでもいいことがあったらしく、ここ最近はとても機嫌が良い。
「……はぁ。帰りますか」
この後特に用事がない私はそのまま帰ることにした。お母さんからもお使いとか頼まれてないし。
たまにはひとりで帰るのもいいだろう。
解散した吹奏楽部はみんな友達と楽しそうに話しながら歩いていく。華奈以外に特別に仲の良い友達は自分にはいない。
部活仲間として、話す程度の人はたくさんいるけど友達と呼べる人は少なかった。
人間関係が面倒くさくなって、高校からは浅く広くを意識していたからかな。中学の頃はわりと友達はたくさんいた。
「……あれ?」
ぼーっと考え事をしながら駅に着き、電車に乗ろうとしていたら見覚えのある背中が見えた。
その後ろ姿を見て自然と跳ね上がる心臓。
君と再会してから何度も見てきた後ろ姿。もう、見ただけでわかってしまうんだ。
心臓が……目が、覚えているんだ。