三者面談の日程をあまりよく見ていなかった私。まさか私の前の人は出雲くんだったとは思わなかった。
「ねぇ。なんかあの子見た事ある気がするんだけど……。琴乃?大丈夫?」
「……だい、じょうぶ……」
余程様子がおかしかったのだろう。
お母さんは私を見るなり慌てていた。どうやらお母さんは出雲くんのことを薄っすらと覚えているらしい。
出雲くんに気づかれませんように、と心の中で祈りながらぎゅっと目を瞑った。
お母さんには出雲くんがここに転校してきたことを話していない。別に隠しているつもりは無いけど、なんか話せずにいた。
「次の方、どうぞ」
ぎゅっと目を瞑りながら出雲くんが通り過ぎていくのを待っていると、中から呼ばれた。
「はい!今行きます!ほら、琴乃行くわよ」
「うん……」
……心臓に悪い、一瞬だった。私はそっと廊下を覗き見る。何事もなく出雲くんは通り過ぎて行った。
お母さんは、出雲くんだということに気づいていなかった。色んな意味でほっとしたけど。
出雲くんとお母さんらしき人物が歩いているのを見て、なんだか心がキュッと苦しくなる。