周りが騒がしい放課後の校舎。私は靴箱に寄りかかりながらスマホをいじって、ある人を待っていた。


みんなリュックを背負って楽しそうに友達と話しながら私の横を通り過ぎていく。



「琴乃!遅くなってごめんね。まだ時間大丈夫かしら?」




ぼーっとスマホを見ていると目の前から聞き覚えのある声が聞こえて、顔を上げた。


そこにはキレイめな格好をしたお母さんがいて、少し息が上がっている。



「お母さん。大丈夫だよ。まだ時間はあるから。……もしかして走ってきたの?」


「遅れちゃうと思ったのよ〜。思ったよりもお仕事長引いちゃって。前から有休もらうって話していたのに」



ため息とともに呆れた声色で話すお母さんに、思わず苦笑い。


学校でお母さんと待ち合わせってなんか不思議な気分。お母さんはキョロキョロと辺りを見渡しながら、靴を履き替えた。



「そういえばあなた部活は?今日は休み?」


「ううん。三者面談の時間だけ抜けてきた。大会近いから気軽に休めないよ」


「……そう。あまり無理しないでね」