曲が始まり、指揮棒でリズムを取りながら部員を見回す先生。その表情がだんだん険しくなっていくのがわかった。
「……ストップ。みんなちゃんと練習したの?この楽譜渡したの3ヶ月前よね?各パートしっかり練習する時間あったはずよね?」
課題曲の演奏を始めて、イントロしか吹いてないのに先生からストップがかかった。
余程下手くそだったのだろう。
ため息混じりにみんなをギロっと睨む。
……確かに、大会用の課題曲は1月に渡された。あれからみんなとパート練習したり、金管楽器と木管楽器にわかれてセッションもした。
でも、みんなのやる気が湧いてこない。誰も、大会に向けて本気で練習する気がない。
私も、その中の一人だった。
「何か言ったらどうなの?夏のコンクールまであと3ヶ月もないのよ。こんなんで全国大会狙えると思ってるの?」
先生の言葉に、誰も、何も答えない。
シン、と静まり返った音楽室。先生のイライラが最高潮に達した。