「……ねぇ。出雲くんなんだけど……。何とかしてウチの吹奏楽部に引っ張ってこれないかな」
「え?急にどうしたの?」
前から思っていた。
出雲くんは絶対にまだ音楽が……ホルンが大好きなんだって。前に吹奏楽部入部を誘った時、速攻で断られてしまった。
だけど今日早穂ちゃんに言われて、改めて出雲くんをウチの吹奏楽部に入部させたい。大会への勝算が上がる、とかそういう思いだけじゃない。
また出雲くんと……音楽を奏でたいと思った。それなら中庭に行って出雲くんと吹けばいいと思うけどいつ現れるか分からない。
それに、ひとりで吹くより仲間と吹いた方が何倍も楽しいんだということが1番よくわかっているはず。
何とか理由をつけて出雲くんを吹奏楽部に入部させたい。たとえ残りの部活期間が少なくても……。
高校最後の夏は、出雲くんと部活をしたいと願ってしまった。
「いや、なんか……出雲くんいたらみんなやる気がまた出そうだし、即戦力だし……。それに、中学三年生の頃の無念を晴らしたいって思っちゃったんだよね」