あの時出雲くんに話を聞いてもらえていなかったら一体どうなっていたのだろう。
先生に反抗したまま終わって、みんなと気持ちがバラバラなままで。きっと大会への向き合い方すら分からなかったと思う。
そう考えてしまうほど、出雲くんの言葉はとても印象的だった。
一瞬、昔の気持ちに戻れた気がして。
あの時の自分は完全に出雲くんに染まっていた。
「……琴乃、嬉しそう。出雲くんのことで考え込んでいたから、なんか良かった。ここのところずっと思い詰めていたから。いい話が聞けたんだね」
「華奈……」
華奈は微笑みながらそう話した。
確かにここ最近は出雲くんのこと、部活のことに頭がいっぱいだった。
今も変わらず頭の中はその二つのことしかないけど、前よりは心が軽くなった。多分出雲くんと話して、みんなと意見を合わせられたら。
問題がひとつずつ解決していくことに心が軽くなっていくのは事実。華奈に言われて、自分がようやく落ち着き始めたんだと気づいた。