そう話す早穂ちゃんはまるで恋する乙女のようだった。……そんなことはないだろうけど、早穂ちゃんが出雲くんを知っていることを知って。


変な気持ちが湧き上がってしまった。



「あ、出雲さんなら私も知ってますよ。ホルン界隈ではかなり有名な先輩ですからね。私も出雲さんのホルンの音に憧れてるんですよ」


「……へぇ……そうなんだ……」



私たちの会話を聞いていたもう1人の後輩が会話に入ってくる。まさか後輩全員が出雲くんのことを知っているとは。


みんなが知っている、とわかった時……なんか胸の当たりがモヤモヤした。


必死にそれを押さえ込んでいた。



「……で、話を戻しますけど……。なんでここに転校してきたか分からないんですけど、これはチャンスだと思って。出雲さんがウチの吹奏楽部に入れば、全国大会への勝算が上がると思うんですよ!」



キラキラした目で話す早穂ちゃん。


だけど私の気持ちは上がらない。だって……。この前、私が誘った時、すぐに断られてしまったから。