後輩の中でちゃんと練習して大会に挑もうとしていた人は、意外といた。ただ、私たち三年生はそこまで本気を出していなかった。
みんな家の事情や受験に向けてとかプライベート優先にしている人が多かった。
私も気持ちはわかる。
でも……。
「皆さんの気持ちはよく分かります。私も今までそうでした。悔しい思いをするくらいなら、楽しめる程度で頑張ればいい。だけど……最近、ある人に出会って、自分の気持ちは変わりました。私は、心の奥底でまだ全国大会を目指したいと思っていることに、気づかされたんです」
出雲くんに再会して、心の中にある自分の本当の思いが溢れ出てきた。
久しぶりに懐かしい人に出会って。
昔とはだいぶ違っていたけど、あの頃のように輝いて見えた時があった。
中学三年生、高校1年生の大会。
あの頃の、悔しい思いがまた……自分を掻き乱した。
「私からのお願いです。これからは部長として……一人の吹奏楽部員としてちゃんとみんなを引っ張って行けるように頑張ります。全国大会を目指すならばこのままハードで大変な練習が続きますが、私についてきて欲しいんです!絶対に後悔させません!皆さんのプライベートのこともちゃんと考えます!だから……最後の夏に、運命の12分にかけてみませんか?」