“僕みたいに”?
出雲くんの言葉にはっとして顔を上げる。どういう意味だろう、と聞き返そうとしたけどやめた。
「……出雲くん、ウチの吹奏楽部に入らないの?」
聞き返す代わりに、質問をした。
再会したあの時からずっと思っていたこと。こうしてホルンを吹くなら、吹奏楽部に入ればいいのに。
「僕は、もういいんだ。音楽を楽しめる体じゃない。みんなに混ざって音楽を奏でる資格はない」
「……え?」
そう言って寂しそうに空を見上げる。
サァ、と風が吹いた瞬間、優しいホルンの音色が隣から聞こえた。
ハッとして出雲くんを見ると音楽に身を任せながらメロディを奏でていた。
……この曲……。
私の、私たちの、中学三年生の時の課題曲。
懐かしい……。
目を瞑り、音楽を聴きながら気持ちを落ち着かせた。ゆっくりと目を開けながらそっと出雲くんの横顔を見つめる。
……ん?あれは、なんだろう?
出雲くんの横顔を見ていたら、右耳の奥に何か機械のようなものが見えた。
「……そろそろ、戻ったら?」