今の私は正常な判断ができないらしい。迷惑そうな出雲くんへグイグイと詰め寄っていた。
「別に。僕の勝手だろ?」
「ふーん。ねぇ。なんか吹いてよ。気持ちが上がるヤツ」
「はぁ?なんだよ、急に。つか、なんでここに二階堂がいるんだよ。部活中じゃないのか?」
私の突然のリクエストに眉をひそめる出雲くん。ため息をつかれてしまった。無視されるかと思ったけど、ちゃんと会話ができていてびっくりした。
私のお願いに眉をひそめながら、楽器をケースから取り出している。
「あー……。先生とぶつかり合って抜けてきちゃった。先生と大会への気持ちとか意見とか合わなくて……。みんな大会に本気にしてないのにね」
出雲くんと話をしていたらまた気持ちが溢れ出した。話していて止まらない。
心做しか出雲くんが昔みたいな感じで話を聞いてくれてる気がして。少しだけ、優しい彼を思い出してしまった。
「……本気で、全国大会目指さないの?」
涙を誤魔化そうとあはは、と笑い飛ばしながら話していた。そしたら、出雲くんが急に真面目な表情になって。
その顔に、ドキッと心臓が跳ね上がる。まるで、自分の気持ちを見透かされたような……。そんな気持ちになった。