｢……ごめん、聞こえてなかった｣


｢え？｣



言い終わってから後悔していると出雲くんから素直に謝罪の言葉が出てきて驚いた。


結構近い距離で呼んだのに、本当に聞こえてなかったんだ……？



｢別にいいけど……。私も言いすぎた。ごめん｣



出雲くんにつられるようにして私も素直に謝る。本当に聞こえていなかったのかまだ疑問に思っていたけど、それは自分の胸の奥にしまい込んだ。


ちゃんと謝ってくれたし、まぁいいか。



｢いいよ。これ、誰から？｣


｢ああ、担任から。書類とか色々入ってるよ｣


｢ふーん……。ありがとう｣



乱暴に差し出された紙袋を受け取り、中身を確認するとそのまま自分のカバン近くに置く。



｢用はこれだけ？｣


｢……まぁ、そう｣



じーっとその動きを見ていると、光の見えない瞳で私を見る。何を考えてるのか分からない。


早くどっか行って欲しいのかな。まっすぐ見つめられ、そんなふうに考えてしまう。



｢まだ残るからもう行っていいよ｣



動こうとしない私にそう言い放った。


その言い方に若干怒りが湧いたけどそれを呑み込んだ。