その後ろ姿に見覚えがあって、恐る恐る名前を呼んでみる。


だけど、返事がない。誰でも聞こえるような声で呼んだのに、無反応だった。



「出雲くん?だよね?」



この人は本当に出雲くんなんだろうか?とだんだん疑ってしまう私。疑問形で出雲くんの名前をもう一度呼ぶ。今度はもっと大きな声で、叫ぶような形で呼んだ。


……でも。


これでも、振り向かない。あれ?


私結構大きな声で呼んだよね?


出雲くんであることは間違いないはずなのに、何も返事がないなんておかしい。昔は誰よりも耳の聞こえが良くて、どんなに小さな音でも振り向いてくれていた。


そして、勢いに任せてもう一度お腹から大きな声を出す。



「出雲くん!!」


「……うるさ。何?」



私の声が保健室に響いた。


ようやく私の存在に気づいたのか、ゆっくりと後ろを振り向く。その顔はどこか迷惑そうで、私を睨むように見ていた。


その表情に何だかフツフツとわけのわからない感情が押し寄せてきて、とても居心地が悪く感じた。


こんなこと、思いたくないのに。出雲くんとまた話したいと思っていたのに。……どうしちゃったの、自分。


そんな自分が嫌になって、私は出雲くんに乱暴に紙袋を前に出した。



「これ!先生に頼まれたから持ってきただけ。後、何回も呼んだのに返事しないのは人としてどうかと思うよ?!」



わけのわからない感情の処理の仕方が分からなくて、勢いに任せて言ってしまった。言い終わったあとにしまった、言いすぎたと思った。