「えー、であるからして、ここにこの公式を当てはめると……」



出雲くんが転校してきて2日目の午後の授業。数学の先生が説明しているのを聞きながらそっと後ろを振り向く。


私の後ろには誰もいない空っぽの机がポツンと置かれていた。


……出雲くんは、いったい何をしているんだろう……。



「……二階堂、二階堂!!」


「はい!」



先生の目を盗んでそっと後ろを見ていたはずなのに、不意に名前を呼ばれて反射的に立ち上がる。


静かな教室にガタッという大きな音が響いた。



「授業中よそ見をするな。罰としてこの問題解いてみろ」


「え、えーっと……」



恥ずかしさのあまり顔を俯かせていると、先生はカツカツとチョークで問題をつつく。


ため息をつきながら私に問題を解くように促した。



「……すみません、わかりません……」



数学が大の苦手な私。


当然習っていない問題はわかる訳でも無く、素直に降参する。



「はぁ。ったく、先生の話をしっかり聞いてろ。今は進路を決める大事な時期だ。授業態度も成績に響くから気をつけろよ」