また、音が鳴った。
今度は耳が割れてしまいそうなそんな音だった。
「すごいすごい!練習したらこの子絶対上手くなるわ!」
たった1音だしただけなのに先輩たちは大はしゃぎ。その姿を見て、私もトキメキが止まらない。
初めて持った楽器。
初めて音をだした楽器。
それが、ホルンだった。
「……私、先輩たちとホルン頑張りたいです!」
興奮が止まらなくて。
気づいたらそう言っていた。こんなにも気持ちが大きく揺らぐ経験は初めてで。
吹奏楽部の見学に来て良かったなと心から思った。
……だけど、私は吹奏楽部の本当のつらさをまだ知らなかった。軽い気持ちで決めた訳じゃなかったけど、まだ覚悟が足りなかった。
「……ありがとう!そして、ようこそ!吹奏楽部の世界へ!私たちは君の入部を歓迎するよ!ねぇ、出雲くん」
「はい。僕も、仲間が増えるのは嬉しいです」
こうして、私は吹奏楽部の世界に踏み込んだ。たった1日でたくさんの出会いがあって。