私はされるがままにホルンを受け取った。椅子に座るよう促され、ゆっくりと腰を下ろす。


ずっしりと重たいホルンは、古いはずなのにピカピカに磨かれていてまるで新しい楽器のよう。


初めて楽器を持った瞬間だった。


重たいのになんだか心地よくて。大きくて、支えるので精一杯。


だけど……私は、ワクワクしていた。さっきまで戸惑っていた気持ちが嘘みたい。


早く吹いてみたくて。


ソワソワと落ち着かなかった。



「じゃあ、1番最初にこのマウスピースで音を出してみて。いきなりだと楽器は吹けないから、このマウスピースで音を出して、慣らしてから吹くの」



説明を受けてから、自分の持っているホルンの先からマウスピースを取り出し、くちびるに当てる。


小さくて丸いものがくちびるに当たるのってなんだか不思議な感じ。



「息を吸って、お腹から吐き出すの。腹式呼吸を意識するといいわね」


「はい!」



腹式呼吸……上手くできるか分からないけど、私は思いっきり息を吸った。