こんな単純な理由で吹奏楽部に入部してもいいのだろうか。華奈はしっかりとやりたい楽器は決まっていそうだし、きっとほかの一年生も……。



「あ、あそこだよ。先輩、練習始めてるかな……」


「ちょ、ちょっとまっ、……」



出雲くんがひとつの空き教室を指さす。


すると、ドアに向かって走り出し、勢いよくドアを開けた。覚悟が揺らいでしまった私は出雲くんを止めようとしたけど。


……少し、遅かったみたいだった。



「琴乃ちゃん!入って大丈夫だって!」



戸惑う私をよそに、楽しそうに手を振る。


どうしよう、という言葉が頭の中を埋め尽くす。先輩達に失礼な態度をとってしまったらどうしよう。


何より、この不順な動機を知られてしまったらどうしよう……。