小学生のブラスバンドではそこそこの成績を残してきたらしく、吹奏楽界隈ではいつの間にか名が知れ渡っていた。


本人はそう恥ずかしそうに話していた。



「それでね、この中学校の吹奏楽部の先生が入学式の日にね、誘ってくれたんだ。仮入部期間なんてどうでもいい。今すぐ吹奏楽部に入ってくれって。そう言われた時は嬉しかったなぁ」



最近の話のはずなのにどこか懐かしそうに話す出雲くんはとてもキラキラと輝いて見えた。


まるで、この先の生活が希望に満ちたかのように。


まっすぐと見つめるその視線には出雲くんの腕の中に収まったホルンがあった。



「だからこうしてホルンに興味持ってくれて嬉しい。きっと先輩も喜ぶよ」


「……あ、いや、私、は……」



またニカッと笑う。


心の底から音楽を楽しんでいる、そんな輝いた笑顔。だけど私はその笑顔を向けられる資格はない。


だって……。


私は楽器なんて何も触れたことがなかったし、何より入部理由が……“出雲くんの音に惚れたから”だから。