ふと出雲くんが聞いてくる。
何を話したらいいかわからなくて黙り込んでいたから、びっくりしてしまった。
「あ、え、えっと……5組の、二階堂琴乃です」
緊張しすぎて、ほぼ反射的に答えてしまった。声も裏返ってしまい、変に思われたかも……。
本当に自分が恥ずかしい……。
「二階堂琴乃。琴乃ちゃんかぁ……。綺麗な名前だね」
「〜〜っ、あ、ありがとう」
無意識に下の名前を口に出す出雲くんに、また心臓がドキッと跳ね上がる。男の子に名前を呼んでもらったのはいつぶりだろう。
なんだかくすぐったくて、自分の名前が特別に感じた。
「僕は出雲真宙。よろしくな」
「あ、うっ……よ、よろしくね」
出雲くんも自己紹介してくれて。
私も同じように下の名前で呼ぼうとしたけど。言葉が詰まって上手く出てこなくて。
こんな気持ちは、知らない。
この、胸がつかえるような、苦しいような。でも不思議と出雲くんのことを意識してしまう。
……これはいったいなんなんでしょうか?