パラパラと楽譜をめくる音が音楽室に響く。どうやらもう一曲演奏するらしく、またみんな楽器を構えた。
二曲目が始まる。
……もう、充分。
充分だった。
私はもう、音楽の魅力に気づいてしまった。家でよく音楽とか聞くけどそこまで惹き込まれなかった。
だけど、今は全然違う。
生で楽器の音を聞いて。しっかりと音楽を感じ取って。
……もう、戻れなかった。
「……え?」
二曲目を聞き入っていると、急に音楽が静かになり、あの男の子が立ち上がる。
先生はゆっくりと指揮棒を動かし、男の子と目を合わせるとお互い頷く。……その瞬間。
ーーパァー……。〜♪♪〜♪♪……。
優しい音色が、音楽室を包み込んだ。
うっとりとしてしまうほど聞き惚れる。優しい、という言葉じゃ表しきれないこの繊細な音はなんなんだろう。
「……琴乃?どうしたの?大丈夫?」
「え?あっ……だい、じょうぶ……」
華奈に……言われるまで気づかなかった。
私は……泣いていた。



