その子だけは先輩たちとは違って、私たちと同じように真新しいジャージを身にまとい、椅子に座っていた。
どこからどう見ても幼く見える男の子は、大きな楽器を抱えて楽譜を一生懸命目で追っていた。
そして、私はそっと視線を下に下ろす。
……間違いない。私たちと同い年の子だ。
「本当だ。内履きの色、私たちと同じ緑色だよ」
私もコソッと華奈に話す。
男の子がこの中に混ざっているという事実が信じられなくて。何度も何度も見てしまう。
先輩に混ざって演奏している姿はかっこよかった。真剣な眼差し、滑らかに奏でる音楽。たくさんの音に囲まれながらも必死にもがいているように見えた。
「なんで同い年の子がもう合奏に混ざってるの?」
「……さぁ?」
華奈は興味津々に男の子を目で追っている。そして、それは私も同じだった。
何故か分からないけど自然と男の子の姿を目で追ってしまう。それくらい、衝撃的だったのだ。
音楽に必死に喰らいつくその姿。
……とても、美しいと思った。
ぼーっと彼ばかり見ていたらいつの間にか一曲目は終わっていた。



