なんとも言えない気持ちを抱えたまま、私たちは音楽室へ戻ることにした。
いつの間にか日は暮れていて、星が瞬き始める。薄暗い中庭で私と華奈は黙りこみ、ゆっくりと音楽室へ戻った。
出雲くん。
フルネームは、出雲真宙(いずもまひろ)くん。私たちにとって同級生であり、最高の吹奏楽仲間だった。
そして、彼は……。
「どうしちゃったんだろうね……」
ぼそり、と呟いた私の声が虚しく響き渡る。華奈は何も言わず、頷いた。
出雲くんに会えて嬉しいはずなのに。
出雲くんと話せてドキドキするはずだったのに。
なんだろう、このぽっかりと心に穴が空いたような感覚は。
出雲くんと再会したその日、私はあの後どう過ごしたのか記憶になかった。
ただ、ただ出雲くんの正気を失った悲しい瞳が離れなかった。
ねぇ、出雲くん。
一体、どうしちゃったの……。
***
数日後のある月曜日の朝。
空は雲ひとつない青空が広がっていた。