私の事覚えててくれたんだ、という喜びよりもこの3年間で変わりきってしまった彼の姿に驚きを隠せない。


かつて、優しく私の名前を読んでくれた彼の声は、聞きなれた声は、どこにいってしまったの……?



「そう、だよ。こっちは華奈。九龍華奈。サックスパートの」


「ひ、久しぶり……出雲、くん」



華奈は震えながらも出雲くんに挨拶する。その間、ずっと私のそでをぎゅっと握っていた。



「……」



華奈の挨拶に関しては無視。



「何、用事ないならもう行くわ」


「……え、あっ。ちょっと……!」



何を話したらいいか分からなくなって、黙りこくっていると、痺れを切らした出雲くんが楽器をケースに入れて歩き出す。


何かを話したいはずなのに、言葉が上手く出てこなくて。


結局、その日、出雲くんは帰ってしまった。中庭に取り残された私と華奈。お互いに顔を見合わせ、微妙な空気が流れる。



「……私たちも、そろそろ音楽室戻ろっか?」


「う、ん。そうだね……」