その瞳を見て、思わず私は息を呑む。


だって……。その表情は、私の知っている出雲くんじゃなかったから。生気を失ったかのような、重い表情。


あの綺麗な音色を奏でていたとは到底思えないほど、彼の表情は……曇りきっていた。



「あ、の……出雲、くんだよね?山吹中学校の。私……二階堂琴乃。同じホルンパートだったの、覚え、てる?」



何か、話しかけてはいけないような、そんな空気を纏う出雲くん。


私はそれでも、なぜここに彼がいるのか知りたくて。途切れ途切れになりながらも聞いた。


華奈は、出雲くんの姿にかなり衝撃を受けたのか固まったまま微動だにしない。


さっきまでの勢いはどこにいったのだろう。まぁ、この表情を見れば無理もない、か……。



「……ああ、覚えてる。二階堂だろ?」



ーードクッ。


久しぶりに、出雲くんの声を聞いた。前聞いた時よりも低い声、掠れるような、今にも消えてしまいそうな声。


そんな声を聞いて、なぜだか無性に涙が溢れそうになった。