『吹奏楽部に決められた大会の時間……運命の12分って知ってる?』
昔一度だけ君に聞いたことのある質問に、悩んだあと出た答えに少し悲しくなったのを覚えている。
『吹奏楽の大会で決められた発表の時間でしょ?その12分のために青春全て捧げても全国大会にいけないところが多い。神様って意地悪だよね』
そう言った君の表情を忘れることは出来なかった。僕たちが捧げた6年間は決して無駄じゃなかったと信じたい。
僕たちが出会ったことも無駄じゃないと思いたい……。
***
高校を卒業した2年後。大学二年生になった僕は、今一人暮らしをしていた。高校の頃片方の聴力を失ってから生きる希望を失っていた。けどそんな僕を引き上げてくれた女の子が1人いた。
もう片方の聴力もほとんど聞こえなくて、これからは音楽から離れて生きようと思っていたのに。
その子だけは僕から離れず、ずっと向き合ってくれて。どれだけそのことに救われたか分からない。
『出雲くん!』
可愛い声で僕の名前を呼ぶその子は、僕にとって一筋の光だった。
ーブー、ブー……。
ある日の午後。カフェで本を読んでいるとスマホが震えた。