そのアナウンスを聴きながらステージに上がり演奏の準備をした。眩しい光がステージを照らし、私たちを映し出す。
リハーサルをしていたおかげもあってスムーズに楽器の準備をすることができた。私は椅子に座り、ホールを見渡す。
前の席には保護者で埋め尽くされていた。中央部分には演奏が終わった他校の生徒が座っている。
そして1番後ろの席には審査員が横一列に座っている。1番見えにくそうなところに座っているがステージから見ると結構目線が審査員の方にいってしまう。
だけど私たちは先生の指揮棒と楽譜を見てればいい。審査員も1人の観客として捉えればいい。
そうしたら、緊張もいくらか和らぐだろう。
数分後、みんなの準備が終わり、先生が前の指揮台に立つ。お辞儀をすると、パチパチと割れんばかりの拍手がホールいっぱいに広がった。
拍手が止むと先生は部員と向き合い、指揮棒を構える。演奏が始まる前、先生が口パクで私たちに何かを伝えた。
“大丈夫”
そう言っていたかもしれない。みんな小さく頷き、一気に息を吸い込む。それが合図かのように先生は指揮棒を振り下ろし、音楽が鳴り響く。
……12分間の音楽が始まった。