“はい!”
しばらく音出しをしていたら先生にそう言われ、合奏が始まる。緊張したなかでもみんな元気よく返事をしている。
周りを見ると深呼吸して気持ちを落ち着かせてる子や目を瞑って精神を整えている子もいた。
自分なりに気持ちを落ち着かせて合奏に挑んでいる。私もゆっくりと息を吸って吐いて、ホルンのマウスピースを口に当てた。
先生は楽譜をめくると指揮棒を一気に振り下ろす。
……大会前、最後の合奏が始まった。
***
30分後。
大会前最後の合奏が終わり、舞台袖に向かう準備をしていた。いよいよ運命の12分が始まる。
この12分で今後の部活の行方が決まるのだ。緊張がさらに増して、手に汗が滲む。合奏している間は、大丈夫だったのに。
急に怖くなってきた。
みんなに不安が伝染らないようにあまり考えないようにしていたんだけど。こればっかりは何度経験しても慣れてくれない。
「じゃあ移動します!」
先生の合図で一斉に移動する。何度も何度も深呼吸して。脇に挟んでいるホルンをぎゅっと握りしめる。
……大丈夫。私は大丈夫。みんなともっと部活をするんだから、この大会も乗り越えられる。