ひとつの小さな部屋には各楽器の音が混ざり合い、凄まじかった。少しだけ合奏をする予定だったので、ホルンパートも椅子に座って楽器を鳴らしていた。


そんな中早穂ちゃんが今にも泣き出しそうな表情でつぶやく。今まで人一倍努力して大会に挑んでいる早穂ちゃん。



「大丈夫。今まで練習頑張ってきた自分を信じようよ」



少しでも緊張がとれたらいいなという思いで背中を擦りながらそう言った。早穂ちゃんは思ったよりも緊張しているようで小さな背中が震えている。



「琴乃の言う通りだ。自分を信じて音楽を奏ればいい。変に緊張しなくてもいい」


「そうだよ。自分を信じようよ!」



私の後に出雲くん、もう1人の後輩……里菜(りな)ちゃんも声をかけた。その言葉に私も救われた。


みんな同じ気持ちなんだ。


緊張しても仕方ない。自分の奏でたい音楽をみんなに届ければいいだけの話。大会の結果が全てでは無いから。



「みんな……ありがとうございます」




仲間から励ましの言葉がかかりちょっとだけ元気を取り戻した早穂ちゃん。そんな早穂ちゃんを見て私は微笑む。



「それじゃあ本番前の合奏を始めます。30分しか時間はないから集中してね」