「……みんなが僕のことを引っ張ってくれたおかげだ。前の学校には申し訳ないけど懐かしい仲間とまた音楽できるのは僕も嬉しい。こんなにも自分の運命が変わるなんて思わなかった」
「私も。最近まで大会なんてどうでもよく思っていたのにまたこうして全力を尽くしてるんだもの。不思議なものよね」
そう言って笑う華奈はとても軽やかだった。さっきまでの重たい空気はいつの間にかなくなっていて、久しぶりの友達と再会したかのようなそんな雰囲気だった。
完全に心を開いた2人を見て私も嬉しくて微笑む。本当に色んなことがあった6年間。
最後の大会にふさわしいと思えるようなそんな素晴らしい音楽をホールいっぱいに奏でたい。
たとえ、全国大会に行けなくても来年、再来年の後輩の力になれるようにいい結果を残したい。
「僕は合奏こそまざれなかったけど自分なりに君たちの音源を聞いて音を合わせてきた。残りの1週間でどれだけ仕上げられるか分からないけど、力になりたい」
「出雲くん……」
自分なりに曲を仕上げてきたなんてさすが出雲くん。今日の合奏でも違和感無いくらい音が馴染んでいた。先生に頼んで合奏の録音をしてもらい、何とかその音に合わせて曲を仕上げたんだって。
私的には、特に問題無いと思うけど、久しぶりで少しブランクがあるから本人は心配だという。