驚く私をよそに出雲くんは冷静に話す。



「……ううん。お礼を言われる資格はない。ちょっと態度が悪かったからって避けてた私は、出雲くんにお礼を言われる資格はないんだよ」



カラン、と飲み物の中に入った氷を一回掻き回す。どこか遠い目をしながら話していた。



「だから琴乃は凄い。ちゃんと過去と今の自分に向き合って出雲くんと向き合って。ほんと、吹奏楽部の部長は琴乃にピッタリだと思った」


「……そんなことないよ」



私のことを言われると思っていなかったので一瞬言葉が詰まった。そんなふうに思われているなら嬉しいに決まってる。


だけど、ついこの間まで部長としての仕事を放棄していたのだ。そんなことを言われる筋合いはないと思ってる。


ましてやここ2ヶ月間の出来事で部長の仕事を全うしたとは思えなかった。それに、私だって最初は出雲くんのことを受け入れられなくて避けていた。



「僕もそう思う。琴乃は自分なりに悩んで向き合って。ほんと、凄いやつだよ」


「2人とも……ありがとう」



ここに来てこんなにも褒められるなんて。否定した私の言葉はどこかへ消え去ったみたいに、2人には残らなかった。


嬉しくて胸が熱くなる。


また泣きそうになって、顔を上げた。