それが周りに伝染するかのようにパラパラと広がる。やがて、小さな拍手が大きな拍手に変わった。


ホールに割れんばかりの拍手が広がり、みんな出雲くんを受け入れた。



「ありがとう……ありがとう」



出雲くんはお礼を言いながらひたすら頭を下げている。


……こちらこそありがとう。


もう叶わないと思っていた願いが叶おうとしているのだから、これ以上嬉しいことはない。また懐かしい仲間と一緒に音楽ができる。


もう、最高の瞬間だった。



「はい。それじゃあリハーサルに戻りましょう。出雲さん、次は自由曲に移るからよろしくね」


「はい」



先生の指示に元気よく返事をする出雲くん。私達も準備を始めた。


そのあとのリハーサルはあまりよく覚えていないけど。とても胸がいっぱいだったことは覚えている。


大好きな仲間が隣にいる。


叶わないと思っていた願いが叶おうとしている。それだけで充分幸せに感じた。


……だけど。


私たちの本番はこれからだ。残り1週間しか時間はない。みんなと一緒に全国大会に行くには数々の壁を突破しなければいけない。


ーー全国大会へのカウントダウンは始まっていた。


運命の12分にどれだけ気持ちを込められるか。それが、1番の勝負だと私は改めて思っていた。