おそらく出雲くんと私が知り合いだということは華奈と先生しか知らないはず。他のみんなはザワザワと不思議そうに周りの子達と話していた。
「それでようやく決心しました。大会まで残り1週間だけど……僕も仲間に入れてくれませんか?お願いします。皆さんと吹奏楽部で音楽をやりたいんです」
私から目を逸らすとしっかりとした口調でそう話した。耳が片方聞こえないこと。そしてもう片方も聴力が落ちていること。
そのこともみんなに話していた。
私はそっと椅子に座り直し静かに耳を傾ける。
「自分勝手なのはわかってます。でも、高校最後の夏は音楽を楽しみたいんです」
この前保健室で話をした時とは大違い。自分の願いをしっかりと話せて、みんなと向き合って。
自分の願いを叶えようと頑張っていた。
「そんなわけでみんな。どうか新しい仲間として迎えてくれないかしら。出雲さんはもう課題曲も自由曲も完璧に吹ける。私は賛成します」
前から話して決まっていたのか先生は前向きにそう言った。そして指揮棒を譜面台に置くとゆっくりと大きな拍手を出雲くんに送る。
いつの間にって思ったけど、私は先生につられて拍手を送っていた。