早穂ちゃんのホルンの音の出し方を思い出してすぐに否定した。


こんな繊細で優しいメロディを奏でる人は少なくとも私のパートの中では誰もいない。みんな元気良く音を出したり、自分なりのアレンジを入れたりして勝手に吹いている。


私は一応楽譜通りに演奏してるけどやっぱり狙った通りの音は出せなくて。


だから、思わず聞き入った。


こんなにも、切なく、優しく、心から音楽を奏でているから。一つ一つの音のピッチもバッチリあっていて聞いていてストレスを感じない。


こんな演奏、プロでしか聞いたことがない。


……いや、今まで出会った中で、1人、いた、かもしれない。



「そっか。じゃあ誰なんだろ?各自で練習だから琴乃のパートの子がここにいてもおかしくないんだけど」


「確かにね。でも、私のパートの子の音じゃない。それは絶対に間違いないよ」


「……琴乃、耳すごくいいからね。琴乃が言うんならそうなのかな」



華奈は私を見て苦笑い。


自分の意見を曲げない私に、呆れたような、そんな笑いをした。