課題曲の演奏が終わり、自由曲に移ろうとする。先生はそんなみんなを見ながら一言、そうつぶやいた。
隣にいる出雲くんはまっすぐと先生を見ている。なんでこんなことになっているのかまだ状況を理解出来ていない。
涙を流しながら出雲くんを見ていたら、何やら頷いて立ち上がる。
「みんな。知ってる人もいると思うけど吹奏楽で活躍している出雲さんがこの学校に転校してきました」
先生の話にみんな耳を傾けている。静まり返ったホールの中で話を進める先生。出雲くんは黙ったままだった。
私は涙を拭いながら話を聞く。
「実は先生は出雲さんが転校してきた日から勧誘をしていたの。でも、彼が事情があって入部はしてくれなかった。リハーサルを中断して申し訳ないけど、みんなに大事な話があります」
先生は出雲くんを見るとゆっくり頷く。他のみんなも状況を理解出来ていないのか出雲くんをじっと見ている。
その張本人はホルンを置いて先生の隣に立った。
「突然現れてすみません。はじめまして。出雲真宙と言います。よろしくお願いします」
出雲くんは前に出ると軽く自己紹介した。みんなを見渡し、深く頭を下げる。