私はメロディを吹きながら指揮棒の先を見るかのように楽器ごと体を横にずらす。その瞬間、私の目から涙が溢れた。


音楽を奏でながらも涙を流して、視界がぼやけた。抑えようとしても涙が溢れて止まらない。


……なんで、ここに君がいるの?


なんでここで……ホルンを構えているの?


舞台袖にいたのはホルンを構えた出雲くんだった。出雲くんは息を吸い込むと課題曲に合わせてホルンパートを吹き始める。


他のみんなは驚いたり、楽器を口から離したりしていた。早穂ちゃんに至っては私と同じようにボロボロ涙を零しながらホルンを吹いている。



「ほらほら、演奏に集中!」



演奏が小さくなった時、先生はそう声をかけた。すると再び音は大きくなる。出雲くんはゆっくりと歩きながらこっちに向かってくる。


そして、ひとつ余計に置いてあった椅子に……座って、続きを演奏していた。私の隣に座る出雲くんは楽しそうに、嬉しそうにホルンを吹いている。


私も涙を流しながら必死に音楽に食らいつく。演奏も後半になり、ようやく落ち着き始めた。



「……うん。これなら大会も大丈夫そうね。みんな、今までよく頑張りました」